死亡事故Q&A
Q 被害者が亡くなった場合、誰が加害者や保険会社に損害賠償を請求できますか。
A 相続人の方が、被害者の方に代わって請求することができます。
ただし、相続人の方が複数いらっしゃる場合、特に他の相続人との関係が疎遠であったり不仲であったりする場合は、相続に関して複雑な問題が生じることがありますので、まずは弁護士にご相談いただいたほうが良いと思います。
なお、近親者(配偶者や子どもなど)は、被害者の取得した損害賠償請求権とは別に固有の慰謝料を請求することができる場合がありますので(民法711条)、悩む前にご相談いただければと思います。
詳細は、「死亡事故と相続人について」をご覧ください。
Q 死亡事故で遺族が受け取る損害賠償としては、何がありますか。
A 慰謝料と逸失利益について、損害賠償を受けられます。
傷害後に死亡した場合や物損がある場合には、治療費や物の評価額に相当する金銭についても損害賠償を受けられます。
詳細は、「死亡事故の損害賠償の種類」をご覧ください。
Q 死亡事故で遺族が受け取る慰謝料について教えてください。
A 慰謝料は、亡くなられたご本人と、ご遺族に対して支払われ、おおよその金額が定まっています。
自賠責保険で受け取れる金額と、裁判実務における基準は、以下の通りです。
<自賠責保険基準の場合>
亡くなられたご本人 350万円、
遺族(被害者の父母、配偶者および子ども)
請求権者1名の場合は本人慰謝料に加えて550万円
請求権者2名の場合は本人慰謝料に加えて650万円
請求権者3名以上の場合は本人慰謝料に加えて750万円
被害者に被扶養者がいる場合は上記金額に200万円を加算
<裁判実務における基準>
ご本人が一家の支柱の場合には2800万円、母親や配偶者の場合には2500万円、その他の場合には2000~2500万円とされています(いわゆる「赤い本」による)。
詳細は、「死亡事故の慰謝料相場と支払基準」をご覧ください。
Q 逸失利益を算定するときの年収はどのように判断するのですか。
A 交通事故の被害者が職業についている場合には、死亡前の収入をもとに計算します。
他方、被害者が失業者、低所得者、幼児や主婦の場合など具体的な年収が把握できない場合には平均賃金をもとに計算します。
Q 死亡事故の場合も人身傷害補償特約は適用されますか。
A 適用されます。
これは、対象の車両に搭乗中の人が事故で死亡または身体に後遺障害や傷害を負った場合に、加害者との示談を待たず、また過失割合に関わらず特約の損害額基準に従って保険金が支払われるものです。
そのため、ご遺族の方が少しでも経済的な負担なしに示談交渉や裁判を進めていくために、優先して支払いを求めることもあります。
ただ、一般的には、自賠責保険を先行させ、保険会社への請求(示談交渉)でも足りない部分について人身傷害補償特約で補てんするケースが多いように思います。
Q 交通事故で死亡した人が入っていた生命保険の保険金など、遺族が何らかの給付を受けている場合、損害賠償の金額に影響するのですか。
A 受けた給付の種類によって、影響する場合もあります。
ポイントは、損益相殺(事故に起因して何らかの利益を被害者側が受けたときに、受けた利益分を加害者に請求できる賠償額から差し引くこと)の対象となるか否かです。
各種給付が損益相殺の対象となるか否かをまとめますと、おおむね次の通りです。
- 生命保険・傷害保険の保険金 対象となりません。
- 各種社会保険給付(厚生年金保険法・国民年金法・各種共済組合法・労働者災害補償保険法・恩給法・健康保険法・国民健康保険法からの給付金) 対象となります。
ただし、労働者災害補償保険法の特別支給金(休業特別支給金・障害特別支給金・障害特別年金・遺族特別年金)については損益相殺の対象となりません。 - 自賠責損害補償額・政府保証事業による填補額 対象となります。
- 搭乗者傷害保険 対象となりません。
- 香典・見舞金 対象となりません。
- 自損事故保険 対象となりません。
- 独立行政法人自動車事故対策機構法からの介護料 対象となりません。
以上の通り、各項目によって、損益相殺の対象となるかどうかは異なっており、裁判例を踏まえた検討が必要な場合もあります。早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
Q 交通事故に関する刑事記録とはなんですか。被害者や遺族が入手することはできますか。
A 交通事故が発生した場合には、警察が交通事故の実況見分を行ったり、加害者や被害者、目撃者の証言を録取します。
そういった捜査の記録を総称して刑事記録と言います。
刑事記録を入手できれば、事故当時の状況が分かり、加害者がどういう言い分を言っているのかが分かります。
また、示談交渉の際には過失割合などを決める切り札にもなります。したがって、非常に重要な書類と言え、早めに入手すべきでしょう。
刑事記録が入手できるかどうかは、時期と種類によって異なります。
- まず、捜査中は、原則として刑事記録をもらうことはできません。
- 次に、不起訴処分となった場合は、実況見分調書などの客観証拠に関しては開示されることが多いですが(特に被害者参加対象事件については原則として開示の方針が取られています)、供述調書に関しては、実務上、開示されないことが多いように思います。
- 裁判中の場合は、被害者及び被害者家族は開示を受けられます。なお、弁護士が被害者参加の代理人となっていれば、スムーズに刑事記録を閲覧・謄写することができます。
- 裁判で刑事罰の判決が下りている場合は、原則として入手が可能です。
以上のように、刑事記録は非常に重要な書類ですが、時期や種類によって入手の可否や方法が異なり、難しいと感じることもあると思います。
弁護士がご遺族の代理人となっている場合、弁護士が①検察庁に対する被害者による閲覧・謄写申請の代理人として入手する方法、②弁護士法23条の2に基づいて検察庁に対し弁護士会照会を行うなどの方法で入手します。
また、③訴訟提起後の場合は、検察庁に対して文書送付嘱託」という方法を使ってスムーズに入手できますので、ご本人の手を煩わせることはほとんどありません。