コラム

女子年少者の逸失利益はどう決める??

2018-03-16

 今回は年少のお子様、特に女性のお子様の死亡逸失利益の算定の仕方を取り上げたいと思います。

 一般に死亡逸失利益の算定は、

   基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

として算定されます(一般的な死亡逸失利益の算定の仕方については「死亡事故の損害賠償の種類」 もご参照下さい。)。

 ところが、年少者の場合には、未だ就労を開始していないことが多いから、基礎収入の算定をどのように行うかが問題となります。現在の裁判実務においては、女性(特に義務教育終了時まで)の年少者の場合、将来の就労可能性を考慮し、かつ社会情勢も踏まえ、男女間の格差をできるだけなくす観点から、死亡した年の全労働者の平均賃金を用いて、基礎収入が算定されるのが一般的となっています。

 もっとも、生活費控除率については、通常女性の場合は30%~40%とされるケースが多いところ、この場合には、同じく男女間の格差をなくすという観点から、独身男子に一般的に用いられる50%に近い45%として算定されることが一般的です。

 また、ライプニッツ係数については、死亡時から就労可能年数の終期である67歳までの年数に対応する係数から、死亡時から就労可能年数の始期である18歳までの年数に対応する係数を差し引いた係数を用いて算定されることとなります。

 これを前提に、例えば「平成27年に10歳の女子年少者が死亡したという死亡事故が発生した」として、死亡逸失利益を算定してみると、

 

    489万2300円  (平成27年・全労働者平均賃金)

     ×0.55   (1-0.45:生活費控除率45%)

     ×12.2973  (18.7605(57年)-6.4623(8年))

     =3308万9144円

となります。

 今回は、女子年少者の場合の死亡逸失利益について一般的な算定の例をお伝えしました(お子様の場合の死亡逸失利益算定の具体例については「交通事故で大切な方を亡くされた方へ(お子様)」 もご参照下さい。)。

 もっとも、上記の例は、あくまで一般的なケースを想定したものであり、実際の算定にあたっては個別の事情も考慮する必要があります。また、未成年のお子様であっても、義務教育終了後の女子の場合には、将来得られるであろう収入額についての見方も異なってくることから、上記の算定とは違ったルールに基づいて算定されている例も多数あります。どのような基準を用いて、基礎収入を算定するかは、賠償額にも大きく影響する可能性がありますので、当サイトの「無料法律相談」 等をご利用いただければ幸いです。

弁護士 柳田 清史

 

民法改正が死亡事故の遅延損害金に及ぼす影響について

2018-02-28

 さて、前回の私が担当したコラムでは「民法改正による交通事故の消滅時効に関する影響」を取り上げましたが、今回は、「民法改正による交通事故の遅延損害金に関する影響」をテーマに取り上げたいと思います。

 現行民法では、交通事故などの不法行為による損害賠償請求権の遅延損害金に関して、不法行為のとき(交通事故発生時)から年5%の割合による遅延損害金が発生するとされております。この遅延損害金の利率は、民法上の法定利率によるものとされています。そして、現行民法では、この法定利率は年5%の固定制が採用されているため、交通事故の遅延損害金の利率も年5%の固定となっていました。

 しかし、改正民法では、法定利率について変動性が採用されることになったため、これに伴い、交通事故の遅延損害金の利率にも影響が生じます。具体的には、①まず改正民法施行当初(平成32年4月1日)からは、法定利率が年3%に変更となり(改正民法404条2項)、②その後3年毎に法定利率が見直され、法定利率に変動が生じる可能性があります(同条3項)。なお、この法定利率が見直される条件については、少し長くなるため、ほかの機会に述べます。

 そのため、交通事故の遅延損害金の利率も、改正当初の利率が年5%から年3%に大きく変更されることになるのです。特に死亡事故をはじめとする重大な事故では、損害額が高額になるため、この改正による影響を大きく受けるものと考えられます。

弁護士 疋田 優

遺族固有の慰謝料請求権を高額化する事情について

2018-02-17

 交通事故の被害者が死亡した場合、被害者の相続人が被害者の損害賠償請求権を相続します。また、被害者の近親者は、遺族固有の慰謝料を請求できる場合があります。このことは、当サイトの「死亡事故と相続人について」でも説明させていただきました。

 このうち、遺族固有の慰謝料の金額については、一般的には金額に差が付けられないことが多いですが、裁判例の中には、一人の相続人(孫)に特に高額の固有の慰謝料請求権を認めたものもあります。

 今回はその裁判例(大阪地判平成22年2月9日交民43巻1号140頁)をご紹介したいと思います。

 

 本件は、加害者の車が、横断歩道を横断していた当時75歳の専業主婦である被害者Aさんに衝突して死亡させたため、相続人らが訴訟提起したという事案です。

 被害者の相続人は、被害者の子X1・X2と孫X3・X4でした。

 裁判所は、Xら固有の慰謝料は各50万円が相当としましたが、X4だけについては300万円が相当との判断を下しました。

 X4は、第1種知的障害の認定を受け、会話による意思疎通がほぼ不可能なうえ、常時介護が必要な状態にあり、被害者Aが世話をしながら作業所への送り迎えをする、という生活を送っていました。裁判所は、このような事情を考慮し、本件事故によって従前の生活が送れなくなり、施設への入所を余儀なくされたことを理由として、X4にだけ300万円という高額の固有慰謝料を認めました。

 

 本件は特殊事情があった事案とも言えますが、事情によっては遺族固有の慰謝料をより高額にできる可能性もあります。

 示談する前に、どの親族がどの程度固有の慰謝料請求の余地があるか、弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

弁護士 田 保 雄 三

妊娠中に交通事故に遭ったら?②

2018-01-29

前回の私のコラム「妊娠中に交通事故に遭ったら?」では、妊娠中の女性が交通事故に遭った場合に特有の問題のうち、①交通事故により流産してしまった場合について解説しました。今回の私のコラムでは、妊娠中の女性の交通事故に特有の問題のうち、② 交通事故が原因で切迫早産になってしまった場合について取り上げたいと思います。

まず、「切迫早産」とは、正期産と呼ばれる妊娠37週~42週未満より前に赤ちゃんが産まれそうになることを言います。一般的に、妊娠中期以降は子宮が大きくなるため、母体が交通事故の衝撃を受ける可能性が高くなります。そして、母体が衝撃を受けることで子宮内筋層への出血によって子宮が収縮し、結果として、切迫早産の可能性が高まると言われています。

交通事故が原因で切迫早産になった場合、入院した場合のみならず、通院治療の場合にも、慰謝料の増額の可能性があります。

というのも、入通院中の慰謝料は、通院期間と入院期間に応じて算定されるのが一般的ですが、切迫早産により入院や長期の通院の必要が生じた場合には、入院や通院の期間が長期になりますので、慰謝料の金額が大きくなります。また、そもそも「慰謝料」とは、被害者が被った精神的苦痛につき金銭賠償を求めるものですが、切迫早産を経験した妊婦は、通常の交通事故の被害者に比べて、より大きな精神的苦痛を被ることが多いと思われますので、精神的苦痛が大きい分、慰謝料の金額も大きくなります。

ただし、切迫早産の場合には、加害者(または保険会社)が「交通事故との因果関係」、すなわち「交通事故が原因で流産した」と言えるかについて争ってくることが想定されます。この場合には、被害者の側で因果関係を立証することが要求されますが、これは簡単なことではありません。また、被害者の妊婦が切迫早産になったことがまったく考慮されず、通常の交通事故の被害者の場合と同様の対応をされてしまう(例えば、切迫早産の治療費を負担しない、慰謝料が増額されない)可能性も十分考えられます。

もしもこのような状況に直面しましたら、必ず交通事故に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。当サイトにお問い合わせいただければ、その時々の状況に応じた、適切な助言をさせていただきます。

弁護士 藏田 貴之

死亡事故被害者の兄弟は固有の慰謝料を請求できる??

2018-01-15

 弁護士の柳田です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本年最初のコラムは、慰謝料に関する問題を取り上げたいと思います。

 交通事故の被害者が死亡した場合、相続人となる親族の方が、被害者本人の慰謝料請求権を相続して慰謝料を請求できることは言うまでもありません。さらに、民法711条では、相続人であるか否かにかかわらず、被害者の父母、配偶者、子に対し、加害者に対する固有の慰謝料請求権が認められています。

 では、被害者の兄弟は、民法711条には明記されていませんが、固有の慰謝料請求をすることはできないのでしょうか。

 この問題に関して、昭和49年12月17日の最高裁判例では、民法711条所定の者(被害者の父母、配偶者、子)と実質的に同視しうべき身分関係にあり、その者が甚大な精神席苦痛を受けた場合、固有の慰謝料請求が認められるとしています(「死亡事故の慰謝料の請求権者について」 、「死亡事故と相続人について」 もご参考下さい。)。

 この点、近似の裁判例でも、上記最高裁判例を踏まえてかなり多くの事例で兄弟による固有の慰謝料請求が認められています。そして、固有の慰謝料請求が認められるか否かは、(被害者との)同居の有無・期間、扶養状況などの生活状況、請求者本人及び被害者の年齢、事案の重大性・悪質性といった事情が総合的に考慮されて判断されています。

 判断の傾向としては、同居の兄弟でかつ同居期間が長いほど情愛関係は深まると考えられますし、事案の重大性・悪質性が高い場合には精神的苦痛の程度が高くなるため、固有の慰謝料請求が肯定されやすい傾向にあります。一方で、請求者の年齢が若い場合(10歳代、20歳代程度)には、消極的に捉えられる傾向があり、被害者との間に親と子との関係ほどの関係性が認められないとして固有の慰謝料請求が否定されている例もあります。

 このように被害者の兄弟に固有の慰謝料請求が認められるケースは比較的多いですが、事案によっては否定されるケースもあることから、請求を検討される場合には一度弁護士へご相談されることをお勧めいたします。当弁護団においても、「無料法律相談」 を実施しておりますので、ご活用いただければ幸甚です。その他、兄弟以外に、内縁の配偶者や祖父母、孫、義父母等の近親者についても、同様に固有の慰謝料請求が認められるかという問題がありますので、こちらに関してもお気軽にご相談下さい。

弁護士 柳田 清史

 

民法改正で交通事故の時効が延びる??

2017-12-28

 今年も残すところわずかとなってきました。

 さて、今年の6月2日に公布された「民法の一部を改正する法律」によって、民法の一部が改正されたことはご存知の方も多いと思います。なお、この改正民法は、平成32年4月1日より施行されることになっています。

 そこで、今年最後のコラムは、「民法改正による交通事故の消滅時効に関する影響」をテーマに取り上げたいと思います。

 現行法(現時点ではまだ改正法が施行されていないため、改正前の民法が適用されます。)は、不法行為に基づく損害賠償請求権について、損害及び加害者を知った時から3年間行使をしないときは、時効によって消滅する、不法行為の時から20年を経過したときも同様とする、と規定されています。

 他方で、改正民法では、原則的な不法行為に基づく損害賠償請求権についての時効期間には変更はありませんが、生命・身体の侵害による損害賠償請求権(死亡事故・人身事故のケース)は、特例として、損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときは時効によって消滅すると改められ、時効期間が延長されることになりました。このような改正がなされた理由としては、生命・身体は他の財産権等の権利と比較して特に保護すべき必要性が高い権利であるということなどがあげられます。

 そのため、交通事故では、死亡事故・人身事故の損害賠償請求権の消滅時効は損害及び加害者を知った時から5年間に伸長されることになります。他方、物損事故の場合、つまり自動車の修理費等の損害賠償請求権は、これまでどおり損害及び加害者を知った時から3年間のままです。

 なお、現時点ではまだ改正法が施行されていないため、改正民法について適用を受けるのは平成32年4月1日以降に発生した債権になるのが原則です。ただし、不法行為に基づく生命身体の侵害による損害賠償請求権(交通事故では死亡事故・人身事故のケース)については、法律が施行される時点において消滅時効が完成していない場合には、改正民法が適用されるため、3年から5年に消滅時効が延長されることになります。

 もっとも、時効期間が伸長されるからといえ、消滅時効の制度がある限り、死亡事故のご遺族が、時効により賠償を受けられる権利が消滅してしまうというリスクは残りますので、なるべく早期に対応していくことが大切であることには変わりはないといえます。

弁護士 疋田 優

高齢者の死亡事故と因果関係

2017-12-15

来年平成30年は、団塊の世代の大半が70代となり、「超高齢化社会」が到来すると言われています。高齢者の方が死亡事故の被害者となるケースは今後増える可能性があるといえるでしょう。そこで、今回は高齢者の死亡事故に特有の問題を取り上げたいと思います。

高齢者の特徴としては、事故とは無関係に病気を抱えている場合があることが挙げられます。このような方が交通事故に遭った後、事故による傷病とは別の傷病名で死亡した場合、死亡と事故との間に因果関係があるのか、すなわち加害者に死亡の責任まで問えるのかが問題となります。

この点に関する裁判例は複数ありますが、今回はそのうちの一つ(神戸地方裁判所平成10年1月30日判決の事案)をご紹介したいと思います。

 本件被害者は事故当時71歳で、糖尿病、慢性膵炎、腰椎圧迫骨折、白内障、肺結核、肺気腫などを患っていたほか、うつ病などで向精神薬を内服しておられました。

そのような中、本件事故により頭部外傷二型、腰部挫傷などの傷害を負い、一旦退院したものの、事故から約5か月後には腰痛やしびれが悪化し、気力低下も著しくなり、事故後7か月後に倒れ、最終的に入院先の病院で肺炎で亡くなったという事案です。

この事案について裁判所は以下のように判示しました。

「(被害者は)交通外傷受傷が精神的要素の悪化を介し、さらに、身体的機能の障害を介して、活動性低下をもたらすことによって、肺炎発症をもたらしたもので、肺炎を直接の死因として死亡したとしても、これらは、通常人において予見することが可能な事態というべきであるから、被害者の肺炎発症と本件事故との間、更には被害者の死亡と本件事故との間には、いずれも相当因果関係があるというべきである」  

そして、その上で、既往症等の存在から損害額の6割を減額するとしました。

 本件では、一見すると事故から死亡までは時間も経っており、因果関係が乏しいとも思えるかもしれません。しかし、裁判所は、因果関係自体は認め、過失相殺の考え方を応用して減額をする、という処理を行っているようです(本件以外にも死亡との因果関係を認めた事案として、大阪地方裁判所平成8年1月25日判決、神戸地方裁判所平成10年9月3日判決、神戸地方裁判所平成14年2月14日判決など)。

もっとも、因果関係の判断は法的評価を伴う難しい問題ですし、裁判例も分かれているところです。

因果関係がないのではないかと思われる事案でも因果関係が認められる事案もあります。

どうせ無理だと思ってあきらめるのではなく、まずは弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。

 

弁護士 田保 雄三

妊娠中に交通事故に遭ったら?

2017-11-30

妊娠中の女性が交通事故に遭われた場合には、妊娠中の女性に特有の問題が生じてきます。具体的には、妊娠中の女性が交通事故に遭った場合には、次のような深刻な事態が想定されます。

 ① 流産してしまう

 ② 切迫早産になってしまう

 ③ 産まれてくる子どもに後遺症が残る

今回のコラムでは、①不幸にも交通事故により流産してしまった場合について解説します。

前提として、産まれていない胎児の場合は損害賠償請求の主体としての「人」ではなく、「母体の一部」という位置づけとなるため、お腹の中にいる胎児に固有の慰謝料請求権は生じません。したがって、産まれる前の胎児には、加害者に対する損害賠償は認められません。

では、流産による精神的苦痛は加害者に対する損害賠償に影響しないかといえばそんなことはありません。結論からいえば、通常の傷害慰謝料に加えて、母親が大切な子どもを失った著しい精神的苦痛の分だけ慰謝料を増額することが考えられます(流産した母親だけでなく、父親も精神的な苦痛を受けるため、場合によっては父親にも固有の慰謝料請求が認められる可能性があります)。流産の時期(妊娠何ヶ月目か)、妊娠に至る経緯などの事情によりケースバイケースですが、過去の裁判例では、1000万円以上の高額の慰謝料の増額が認められた事例もあります。

ただし、流産のケースには、加害者(保険会社側)が「交通事故との因果関係」、すなわち「交通事故が原因で流産した」と言えるかについて争ってくることが想定されます。この場合には、被害者の側で因果関係を立証することが要求されますが、これは簡単なことではありません。

もしもこのような状況に直面しましたら、必ず交通事故に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。当サイトにお問い合わせいただければ、その時々の状況に応じた、適切な助言をさせていただきます。

弁護士 藏田 貴之

 

自転車事故でも賠償を受けられる??

2017-11-15

 今回は、自転車事故の賠償問題について、お話ししたいと思います。交通事故といえば、自動車事故がまず思い浮かぶ方も多いと思いますが、自転車の運転者が加害者となる死亡事故も少なからず発生しており、近年の自転車利用者の増加、少子高齢化や自動車利用者の減少等の事情から、むしろ交通死亡事故における自転車死亡事故の割合は増加傾向にあるといえます。

 また、死亡事故に限らず、自転車事故においても高額賠償が認められる事例は多くあり、例えば平成20年9月に神戸で起きた自転車事故では、被害者の60代女性が寝たきりとなり、平成25年に神戸地裁において加害者側に9500万円の支払いを命じる判決が言い渡されました。この判決の影響により、近年全国的に自転車事故に関する訴訟が多数提起されるようになり、自転車保険に加入していなかったため、高額の賠償責任を負担した加害者が自己破産を申立てるといったケースも増加している状況にあります。そして、被害に遭われた方は、加害者が自己破産を申立て免責が認められてしまうと然るべき賠償を受けることができなくなってしまうため、このような事態を重く見た地方自治体において、兵庫県を皮切りとして条例により自転車保険の加入の義務化を進める動きが進められているのが現状です(現時点では、大阪府、滋賀県、鹿児島県(その他京都市、名古屋市等)において義務化がされており、今後もこの動きは拡大していくものと思われます。)。

 自転車事故において加害者が無保険であることにより正当な賠償を受けられないという問題は、自動車事故の場合と同様、被害者の方にとっては非常に悩ましい問題といえますが、上記のように被害者保護を目指した制度設計が進められ、このような動きを受けて全国的に自転車利用者が自転車保険へ加入する動きも増えているといった事情を踏まえれば、数年前と比較すれば改善傾向にあるといえます。また、加害者側が既に加入している他の保険で自転車事故の賠償を受けられる場合や、加害者が無保険であっても直接加害者から賠償を受けられる場合もありますので、自転車事故の被害に遭われた場合でも、すぐに諦めて泣き寝入りすることなく、一度弁護士へご相談いただくのが良いと思います。当弁護団においても、事案に応じて様々な角度から適正な賠償を受けるための手段を検討し、アドバイスをさせていただきますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

 

弁護士 柳田 清史

高速道路で後続車を無理やり停止させた者と追突した者の民事上の責任はどうなるの?

2017-10-31

 最近、あおり運転等の危険運転が、テレビや新聞などで頻繁に取り上げられています。特に、東名高速道路で、ワゴン車を追い越し車線上に無理やり停車させて、そのワゴン車に大型トラックが追突し、被害者2名が亡くなった事故で、ワゴン車を無理やり停車させたとする加害者が、過失運転致死傷罪等の疑いで逮捕されたニュースは記憶に新しいと思います。

 今回は、この問題に関連して、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の民事上の責任がどうなるのかということを説明したいと思います。なお、上記事故では、車を無理やり停止させた者の刑事上の責任が頻繁に取り上げられていますが、本コラムではこの点は割愛し、民事上の責任についてのみ説明します。

 さて、この民事上の責任問題は、共同不法行為という問題に分類され、この共同不法行為が成立する場合には、先の事案でいうと、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の両名に対して、原則として同額の損害賠償の請求することができます。つまり、どちらかが無資力であっても資力のある加害者側に損害全額の請求ができるということになり、死亡事故のご遺族の救済に資することになります。

 では、いかなる場合に共同不法行為が成立するといえるのでしょうか。共同不法行為が成立するためには、一般的に、関連共同性という要件が認められなければならないとされています。この関連的共同性は、必ずしも単一の事故でなくとも、第1事故と第2事故が時間的場所的に近接し、第1事故が第2事故の原因となっているといえる場合には認められる可能性があります。

 そのため、冒頭のケースでも、民事上は、共同不法行為として、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の両名に対して損害賠償請求を行なえる可能性があります。

 もっとも、複数台の車両が絡んだ事故に関する民事上の責任問題は、判断が難しいケースも多いため、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 疋田 優

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