コラム

外国人の逸失利益

2018-08-17

 昨今、人口減少と労働力の減少が叫ばれる中、外国人労働者も増えています。

 では、日本に滞在する外国人の方が日本において交通事故に遭い、亡くなったという場合、逸失利益はどのように算定されるのでしょうか

 まず、交通事故が我が国で発生した場合、被害者が外国人でも、原則として我が国の不法行為に関する法令が適用されます(法の適用に関する通則法17条等)。

 そして、外国人の被害者であっても、逸失利益の発生及び計算式自体は、「死亡事故の損害賠償の種類」で説明した内容で変わりありません。違いが出てくるのは、計算式に当てはめる前提となる基礎収入の金額をどのように認定するか、という点です。

 この点、一般的には以下の通りの基準となっているようです。

① 永住資格を有している場合 

 日本人と同様に基礎収入を算定する。

② 就労可能な在住資格を有し、現に日本で就労していた場合 

 日本での現実収入の金額を基礎とする。在留期間の更新を受けられる蓋然性が立証されれば、更新後の期間についても同様の金額を基礎とするが、立証がされなければ、在留期間後については想定される出国先での収入等の金額を基礎とする。

③ 就労可能な在留資格を有しておらず、かつ日本で不法就労していた場合 

 予測される日本での就労可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎とする。日本における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定する(最判平成9年1月28日民衆51巻1号78頁)。

④ 就労可能な在留資格を有しておらず、かつ日本で就労していなかった場合 

 母国での収入等の金額を採用する。

 このように、外国人にどのような基準での逸失利益が算定されるのかは在留資格の有無やその他の事情により変わるといえます。

 死亡事故に限らず、自社で雇用する外国人労働者が交通事故に遭ったという場合等は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 田 保 雄 三

運転代行を頼んだときの事故の責任は誰が負う?

2018-08-01

 自動車に乗って出かけて、お酒を飲んだ帰り道、「自動車運転代行」を利用する方も多いかと思います(間違っても飲酒運転は、絶対に避けてください)。運転代行を利用中の交通事故について、誰が事故の賠償責任を負うのでしょうか。

 この場合、運転代行を利用中に、①運転代行業者が交通事故を起こして、他人にけがを負わせた場合と②利用者自身がけがを負わされた場合が考えられますが、今回は前者の場合について解説します。

1 賠償責任の所在

 結論から言うと、運転代行業者が交通事故を起こして他人にけがを負わせた場合、賠償責任を負うのは、運転代行業者と利用者の両方です。まず、運転代行業者は、自動車を運転し目的地まで送り届けるサービスを提供しているのですから、サービス提供中の事故について、民法709条(または民法715条)の不法行為責任、さらに自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任を負い、被害者に賠償をしなければなりません。次に、運転代行の利用者は、運転代行業者に運転を任せて使用したとして、民法715条の不法行為責任を負います。また、利用者自身が運転はしていないにしても、出発地点から目的地まで自動車を運んでもらう指示を出しているため、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任も負わなければなりません。運転代行業者のみならず利用者も責任を負わなければならないのは酷とも思えますが、交通事故の被害者保護の観点からすれば、やむを得ないところです。

2 自動車保険の利用

 ここで重要となるのは、賠償責任を肩代わりしてくれる保険の存在ですが、事故を起こしたときに加入している利用者の任意保険は、多くの場合、運転代行業者を利用中の交通事故については保険金支払いの対象外となります。利用者は任意保険を使えず自賠責保険しか使えません。例えば、被害者が死亡した場合や高度の後遺障害が残った場合などには、賠償金額は高額となるので自賠責保険の支払限度額を超過した金額は利用者の自己負担となってしまう可能性があります。ただし、運転代行業者は、対人賠償8000万円、対物賠償200万円以上の自動車保険又は共済に加入する義務があり、ほとんどの場合、運転代行業者が加入する保険で対応可能と思われます。

 運転代行業者の中には保険に未加入の業者もあり、利用した業者が保険未加入だった場合には、利用者が賠償を請求される危険がありますので、くれぐれも保険未加入の業者を選ばないよう注意が必要です(保険加入業者かどうかを判断する目安として「優良運転代行業者評価制度」があり、認定を受けた優良業者は全国運転代行協会のホームページ上で検索できます)。

弁護士 藏 田 貴 之

年金生活者の死亡逸失利益は請求できるか??

2018-07-24

 近時、交通死亡事故においても、高齢者の方が被害者となる割合が増加しています。高齢者の方の場合、収入が年金のみである場合も少なくありませんが、今回は、このような場合に、その相続人が、将来受給できたであろう年金分を逸失利益として請求することができるかという問題を取り扱いたいと思います。

 結論からいえば、被害者が年金受給者であっても、国民年金や普通恩給については、逸失利益の請求は認められます。これは、受給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであること、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても同一の機能を営むものであること(最高裁平成5年3月24日判決参照)、保険料が拠出されたことに基づく給付であること(最高裁平成11年10月22日判決参照)等がその理由とされています。

 ただし、遺族年金については、専ら受給権社自身の生計維持を目的としていることや、受給権者自身が保険料を拠出していないこと等を理由に、逸失利益の請求が否定されています(最高裁平成12年11月14日判決参照)。

 次に、年金受給者が逸失利益を請求する場合の注意点として、生活費控除率の問題があります。年金受給者については、年金が生活費に費消される可能性が高いという性格上、稼働収入を得ている場合よりも高い割合で生活費が控除されるケースが多いという特徴があります(生活費控除率については「死亡事故の損害賠償の種類」もご参照下さい。)。事案によって控除率は様々ですが、生活費控除率が高いケースでは、70%から80%とされている例もあります(通常のケースでは30%~50%程度です。)。もっとも、稼働収入を得ている場合と同程度の控除率に留まるケースや、特別の事情によって生活費控除がされないケースなどもありますので、事案によって様々といえます。

 以上のとおり、年金受給者の逸失利益を請求する場合には、そもそも請求が可能かどうか、請求ができるとしてどの程度請求が可能かといった法的な問題を含む検討が必要となります。お悩みの際は、当弁護団の無料法律相談も、是非お気軽にご活用下さい。

弁護士 柳田 清史

「相殺に関する民法改正が交通事故損害賠償実務に与える影響」

2018-07-02

 さて、私が担当したコラムでは、これまで3回にわたり民法改正をテーマに取り上げましたが、今回も、「相殺に関する民法改正が交通事故損害賠償実務に与える影響」という民法改正に関連したテーマに取り上げたいと思います。

 現行民法では、不法行為によって発生した債権を受働債権(相殺の意思表示をする者の債務)とする相殺は一律に禁止されていました(現行民法509条)。

 これに対して、改正民法では、【①悪意による不法行為に基づく債務】と【②人の生命・身体の侵害による損害賠償債務】を受働債権とする以外は、不法行為による損害賠償請求であったとしても、受働債権として相殺することを認めています(改正民法509条)。

 この民法改正によって、交通事故実務において、人身損害の事故の場合は、改正前と特段異なってくるところはないかと思われます。他方で、物損事故で、双方に過失が生じる事故の場合には、これまでの現行民法では、和解、示談等で相殺の合意がある場合を除いて、一方当事者からの相殺の主張は許されませんでしたが、改正民法においては、このような場合にも一方当事者からの相殺の主張が許されることになります。なお、この物損事故で、双方に過失が生じる事故の場合に相殺が可能であると考えた場合には、任意保険会社との関係で相殺後の処理が問題となり得ますが、これは別の機会で述べたいと思います。

 弁護士費用特約の普及により、少額の物損も紛争化傾向が顕著である昨今の状況に鑑みると、この改正民法が交通事故損害賠償実務に与える影響は小さくはないものと思われます。

弁護士 疋田 優

高齢者の死亡事故と因果関係(2)

2018-06-15

2016年12月15日コラムでは,病気を抱えている高齢者が交通事故に遭った後,事故による傷病とは別の傷病名で死亡した場合,死亡と事故との間に因果関係が認められるのかという問題について,神戸地裁平成10年1月30日判決の事案を紹介しました。

これに関連して,今回は,事故による受傷は重症ではなかったものの,受傷をきっかけに入院し,そのまま寝たきりの状態となり,その結果的に死亡に至った事例として,神戸地裁平成14年2月14日判決(平成13年(ワ)第1050号 損害賠償請求事件)の事案をご紹介します。

本件は,左片麻痺を有する85歳の男性が,事故による肋骨骨折等が原因で寝たきり状態となり,147日後に肺炎で亡くなった事案です。

裁判所は,「亡Xは,本件事故による受傷自体によって,直ちに死亡したものとはいえないものの,本件事故による受傷と脳梗塞の後遺障害とがあいまって,ほとんど寝たきりの状態となり,それによって,体力・免疫力の低下を来し,健康状態が悪化し,肺炎を罹患して死亡するに至ったものと認められ,亡Xのような高齢者の場合,ほとんど寝たきりの状態になれば急激に体力の低下を来すことは通常あり得ることであるから,亡Xの死亡と本件事故との間には相当因果関係があるというべきである。」として本件事故と死亡の因果関係を認めました(事故の受傷と左片麻痺が相まって死亡するに至ったとして,3割の素因減額を適用)。

本件は,事故による受傷自体は,死に至る程度ではありませんでしたが,高齢者が寝たきり状態になったことを根拠に,因果関係を認めています。この事例や,前回にご紹介した事例(事故後いったん退院した後亡くなった事例)を見ると,高齢者であればあるほど,たとえ事故とは別の原因で死に至ったとしても,事故が寝たきり状態の契機となっていれば,因果関係が認められやすい傾向にあると言えるかもしれません。

このような判断は,非常に難しいものですので,まずは当弁護団までご相談ください。

弁護士 田 保 雄 三

弁護士費用が心配な方へ ~弁護士費用特約②~

2018-06-05

 前回の私のコラム弁護士費用が心配な方へ ~弁護士費用特約~」(平成30年4月2日公開)では、弁護士費用特約についてご紹介しました。今回の私のコラムでは、さらに一歩進めて、弁護士費用特約の効果的な使い方について、ご紹介させていただきます。

① 交通事故の相手方(保険会社)とのトラブル全般で利用できる

 交通事故の相手方保険会社との示談(話し合い)では、「加害者(保険会社)が車の修理費を支払ってくれない」「相手保険会社から治療費の打ち切りの連絡があった」「示談の提示があったが、不利な内容ではないか不安・・」など、トラブルを抱えたり、不安を感じられる方は少なくないと思われます。相手方保険会社との示談交渉中、お困りの方であれば、いつでも弁護士費用特約を利用することができます。

相手方当事者の過失が100%の「もらい事故」に効果的

 交通事故に遭った際、自動車保険に加入していれば担当者が相手方(保険会社)と示談交渉をしてくれますが、ご自身の過失が0%の場合(例えば「信号待ちで停車中に追突された事故」等)には、示談交渉を代行してくれません。自動車保険は、原則として事故の相手方への賠償に備えるためのものですので、相手への賠償が発生しない事故では利用することができません。このような場合、相手方保険会社との示談交渉は、被害者の方ご自身でするか、費用を負担して弁護士に依頼しなければなりませんが、弁護士特約に加入していれば、弁護士費用の心配をすることなく弁護士に示談交渉を委任することができます。

③ 物損事故の場合でも利用できる

 弁護士費用特約は物損事故(被害者がけがをしていない事故)でも利用できます(当然、ご自身に過失がある場合でも利用できます)。物損事故の場合、損害額が人身事故に比べて少額になる場合が多く、費用の面で弁護士に依頼することが困難な場合も少なくありません。弁護士費用特約を利用すれば、物損事故の弁護士費用を保険会社が負担しますので、弁護士側としても受任しやすくなり、結果として相手方保険会社との示談交渉がスムーズにまとまる可能性が高まります。

④ 相手方当事者が自動車保険に未加入の場合に効果的

 交通事故の相手方当事者が自動車保険に加入していない場合、相手方との交渉が困難を極めることが少なくありません。弁護士費用特約を利用して、保険未加入の相手方との示談交渉を弁護士に委任すれば、結果として保険未加入の相手方当事者との示談交渉がスムーズにまとまる可能性が高まります。

 このように弁護士費用特約は、非常に便利で使いやすい保険ですので、交通事故に遭われた場合には、ご自身が加入されている保険会社に弁護士費用特約が利用できるかを問い合わせてみることをお勧めします。(ちなみに、当死亡事故弁護団では「相談料・着手金・賠償診断無料」をお約束しておりますので、弁護士費用の心配はご無用です)。

弁護士 藏 田 貴 之

 

 

 

 

死亡事故と労災保険(2)

2018-05-14

 さて、死亡事故と労災保険(1)では、死亡事故の場合の労災保険給付の基本的な制度概要をご説明しましたが、今回は「労災保険給付を受け取った場合に損害額がどうなるか」という点をお話ししたいと思います。

 交通事故においては、相手方本人及び相手方の契約している任意保険会社に対して損害賠償を請求できることはもちろんですが、それ以外でも自賠責保険、政府保障事業制度、年金などの社会保険、そして今回取り上げた労災保険など、様々な被害者救済制度が設けられています。これらの被害者救済制度を利用して損害の填補を受けた場合、相手方に対して請求できる賠償額は減ってしまうのか?というのが今回のテーマです。

 まず、遺族補償年金については、平成27年3月4日の最高裁大法廷判決において、「被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するに当たり、上記の遺族補償年金につき、その填補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。」と判示しています。「損益相殺的な調整」というのは簡単に言えば、同じ事故について、被害者が損害を被ったのと同じ原因によって利益も得ている場合に、その利益を損害から控除して(差し引きして)調整するという意味であり、最高裁はこの調整を行うことが相当だとの見解を示しました。したがって、遺族補償年金を受給した、あるいは受給することが確定した場合は、その分賠償額が減少することとなります。

 また、この調整が行われる時期については、「不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当である」としています。交通事故の場合、事故発生時から損害が発生するものと観念され、さらにその損害額を元本として遅延損害金(遅延損害金については、「民法改正が死亡事故の遅延損害金に及ぼす影響について」などもご参照下さい。)も発生しますが、この最高裁判例に従えば、損益相殺的調整が発生する場合、事故発生の時点から損害が填補されたという扱いがなされることから、この部分についての遅延損害金は請求できないこととなります。

 もっとも、遺族特別支給金や遺族特別年金(遺族特別一時金)については、労働福祉事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、被災労働者の損害を填補する性質のものではないとの考えから、遺族補償年金とは異なり、損益相殺的な調整を行うことは否定されています(最高裁平成8年2月23日判決)

 このように同じ労災保険給付であっても、その内容によって損益相殺の対象となるかどうかが異なりますし、その他の救済制度を利用した場合も、受けた給付が損益相殺の対象となるか否かは個別の内容によって扱いが変わってきます。そのため、実際の損害額の算定にあたっては、一度弁護士へご相談いただくことをお勧めいたします。

 当サイトにおいても賠償額無料診断サービスを行っておりますのでお気軽にご利用下さい。

弁護士 柳田 清史

民法改正に伴う中間利息控除について

2018-05-01

 さて、前回の民法改正に関するコラムでは「民法改正による交通事故の遅延損害金に関する影響」を取り上げましたが、今回は、「中間利息控除」をテーマに取り上げたいと思います。

 そもそも、中間利息控除という言葉自体聞きなれない方も多いかもしれません。交通事故による損害賠償は、一時金(一括払い)で全期間分の補償が行われるのが原則です。 そのため、被害者の方にとって、一時金で支払われると、本来1年ごとに逸失利益の支払いを受ける以上に大きな利益を得ることになります。そこで、この逸失利益の計算においては、損害の公平な負担という観点から、将来の利息による増額分を控除する運用が行われており、その利息分の控除を「中間利息控除」と呼ばれています。

 これまで、中間利息の控除方法を行う場合については現行民法では規定されていませんでしたが、改正民法によって明文化され、控除すべき中間利息の割合は、その損害賠償請求権が生じた時点における「法定利率」によることになりました(改正民法417条の2)。

 そして、前回のコラムで説明したとおり、民法改正によって、これまで年5%であった法定利率が改正民法施行当初3%に変更されるので、この点で損害額が大きく異なってくる可能性がでてきます。

 例えば、死亡事故で被害者の方がお亡くなりになった場合、事故当時38歳、基礎収入600万円、生活費控除率50%、労働能力喪失期間25年という架空のケースを想定すると以下のように逸失利益額に大きな違いが生じます。

 (現行民法の法定利率年5%の場合)

  600万円×0.5×14.0939=4228万1700円

 (改正民法施行当初の法定利率年3%の場合)

  600万円×0.5×17.4131=5223万9300円

 

 このように、中間利息控除の部分でも、特に死亡事故をはじめとする重大な事故では民法改正による影響を大きく受けるものと考えられます。

弁護士 疋田 優

子どもの責任は親が負う?

2018-04-16

交通事故の中には、自転車が加害者となって死亡や後遺障害などの重大な事故を引き起こすケースもあり、高額の損害賠償が認められるケースも多くあるということは、以前のコラムでも解説がありました。

ところで、自転車と言えば大人だけではなく、子どもが乗ることも多い乗り物です。

子どもが乗る自転車が、死亡事故をはじめとする重大な事故を引き起こすケースもあります。そのような場合、被害者側としては、誰に請求すればよいのでしょうか。

この点、自転車事故に関する高額賠償を認めた著名な裁判例(神戸地判平成25年7月4日)では、親の監督責任が認められています。

この事例では、小学生の運転する自転車が、歩行中の被害者と正面衝突した事故について、裁判所は、小学生が前方を注視して交通安全を図るべき基本的注意義務を怠り、衝突直前まで被害者に気付かなかったという過失を認定した上で、小学生の親である被告が、息子に対して自転車の運転に関する十分な注意や指導をしていたとはいえないとして、監督者責任(民法714条1項)に基づいて親に9000万以上もの賠償責任を認めました

このように、たとえ加害者が子どもであっても、親の監督者責任が認められる余地はあり、親を相手として請求できる可能性があります。誰を相手として、法律構成をどのように組み立てるかは、一般の方ではなかなか判断がつきかねる問題でもありますので、あきらめる前にまずは弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 田 保 雄 三

弁護士費用が心配な方へ ~弁護士費用特約~

2018-04-02

 弁護士にご相談される場合、「どれくらい弁護士費用がかかるのだろう?」と不安に感じられる方も多いと思います。今回の私のコラムでは、交通事故(死亡事故)の被害に遭われた方で、弁護士費用が不安に感じられる方に、「弁護士費用特約」についてご紹介させていただきます(ちなみに、死亡事故弁護団では、「相談料・着手金・賠償診断無料をお約束しておりますので、弁護士費用の心配はご無用です!!)。

 さて、弁護士費用特約(正式名:弁護士費用等補償特約)とは、交通事故の弁護士を依頼した場合、弁護士費用を保険会社が代わりに支払う特約を言います。

 弁護士費用特約には、次のような特徴があります。

① 弁護士費用特約の補償の上限額

概ね、弁護士への法律相談料として10万円まで

   弁護士に依頼した場合の着手金・報酬等の費用として、300万円まで

補償を受けることができます。死亡事故や重度の後遺症が残った場合など重大な事故のケースでは、弁護士費用が300万円を超えることもありますので、個別に弁護士にご相談いただくことをお勧めします

② 補償対象者の範囲

弁護士費用特約の補償対象者は、保険契約約款上、

・記名被保険者またはその配偶者

・記名被保険者またはその配偶者の同居の親族

・記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

・契約自動車に搭乗中の者

・契約自動車の所有者

と規定されていることが一般的です。

ここで重要なことは、弁護士費用特約が利用できる対象者の範囲はかなり広く設定されていることです。補償対象者の範囲について、自動車保険契約の内容を確認しておくことをお勧めします。

③ 弁護士費用特約と保険料

自動車保険に弁護士費用特約を附帯した場合の保険料は、金額は年間1,000円~3,000円程度と、さほど高額ではありません。また、弁護士費用特約を利用しても、翌年の自動車保険の保険料が上昇することはありません

 このように弁護士費用特約は、弁護士の立場からみて、非常に便利で使いやすい保険ですので、積極的な利用をお勧めします。次回の私のコラムでは、弁護士の立場からみた「弁護士費用特約の適用場面と上手な使い方」についてご紹介させていただく予定です。

弁護士 藏田貴之

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