1 刑事責任
人身事故の場合、加害者は、①過失運転致死罪や②危険運転致死罪などの罪に問われ、それらに対する刑事罰を受ける場合があります。
①は自動車運転処罰法5条に基づき、7年以下の懲役もしくは禁錮か又は100万円以下の罰金が定められています。
また、②は飲酒運転など悪質な交通事故を特に重く処罰するもので、自動車運転処罰法2条以下に基づき、死亡した場合には、1年以上20年以下の懲役という非常に重い刑罰が定められています。
2 民事責任
交通事故の加害者は、被害者(または相続人等)に対して損害賠償金を支払うべき責任を負います。これが民事上の責任です。
自動車事故の場合、損害賠償責任の根拠は、民法上の不法行為の特別類型である運行供用者としての責任です。
一般の民法上の不法行為責任と異なり、運行供用者責任の場合は、被害者の方の立証責任の負担が軽減されており、また直接の加害者以外の者(例えば、自動車の保有者、自動車を貸した人、運転手が事故を起こした場合のバス会社、タクシー会社等)にも責任を負わせるなど、より容易に損害賠償を請求することができます。
もっとも、いかなる者が「運行供用者」に該当するかは、裁判例等を踏まえた検討が必要な場合もありますので、弁護士にご相談されることをお勧めします。
3 行政上の責任
前記の刑事責任や民事責任以外にも、加害者は反則金の徴収や運転免許の停止など行政上の法的責任を負担することもあります。
4 3つの法的責任の関係
これらは、それぞれ別個の法的責任であり、直接的な関連はありません。
刑事罰を受けても民事責任や行政上の責任を免れることにはなりませんし、民事責任を果たしても刑事責任や行政上の責任を免れることにはなりません。
もっとも、刑事責任を科された場合には社会的責任を果たしたということで民事責任が若干軽減されたり(損害賠償の減額)、民事責任を果たしたため反省の情が認められるとして刑事責任が軽減されたりということはありますので、間接的な影響はあります。