今回は、「子供・幼児」が死亡されたケースの「死亡慰謝料の増額」をテーマに取り上げます。
なお、被害者が「子供・幼児」である場合の死亡慰謝料の標準額は一般に2000万円~2500万円とされています(死亡慰謝料の増額事由については、「死亡慰謝料の増額(1)~(4)」も併せてご覧下さい。)。
① 大阪地裁平成20年9月26日判決・自保ジ1784・15頁
片側1車線の路側帯を歩行中の9歳・男子が加害者に後方から追突された死亡事故で、加害者が朝まで飲酒し、事故後救護・報告を行わずひき逃げを行ったばかりか、強力な口臭消しを購入し、また衝突まで全く被害者に気が付いていなかったにもかかわらず捜査段階ではこれを隠す虚偽の供述をし、さらに被害者本人の年齢に照らせば、前途無限の可能性があったにもかかわらずその夢を絶たれたものといえ、父母も事故後心療内科に通院したことから、基準額の3割増しを相当とし、本人分慰謝料として2750万円、及び父母それぞれに250万円の合計3250万円の慰謝料が認められました。
② 横浜地裁平成23年10月18日判決・判時2131号86頁
14歳・の男子中学生が被害者となった死亡事故で、加害者が、過去にも医師の指示に背いて抗てんかん薬を服用せずに物損事故を起こしていたこと、その後も抗てんかん薬の服用を日常的に怠っていたことから、一時的に注意を怠ったというものでは到底なく、重大かつ悪質なもので、強い非難に値するとされ、また刑事事件の公判や遺族を訪問した際に薬を服用していた旨虚偽の供述をしていたこと等を考慮し、本人分慰謝料として2600万円、固有慰謝料として父母について各400万円の合計3400万円の慰謝料が認められました。
次回は、「高齢者」の方が死亡されたケースについて具体的な事例をご紹介いたします。
弁護士 柳田 清史