法律上、相続人であるか否かにかかわらず、死亡事故の被害者の父母、配偶者、子に対し、加害者に対する固有の慰謝料請求権が認められています(民法711条)。他方、被害者の祖父母や孫は、この民法711条には明記されていません。では、固有の慰謝料請求をすることはできないのでしょうか。
最高裁判例では、民法711条所定の者(被害者の父母、配偶者、子)と実質的に同視しうべき身分関係にあり、その者が甚大な精神席苦痛を受けた場合、固有の慰謝料請求が認められると判断しており、被害者の祖父母や孫にも固有の慰謝料請求が認められる場合があります。
近似の裁判例では、被害者と孫らが同居しており、孫が母親と死別したため被害者が養育した経緯が存在し、また、孫の一人が障害者であったため被害者が介護していた者に対する固有の慰謝料を認めたものがあります(大阪地裁平成22年2月9日)。
もっとも、死亡事故における祖父母・孫については、同居の有無だけでなく、同居中の生活関係の実態も詳細に検討されているため、否定例も相当数ありますので、請求を検討される場合には弁護士に一度ご相談下さい。
弁護士 疋田 優