高齢者の死亡事故と因果関係(2)

2016年12月15日コラムでは,病気を抱えている高齢者が交通事故に遭った後,事故による傷病とは別の傷病名で死亡した場合,死亡と事故との間に因果関係が認められるのかという問題について,神戸地裁平成10年1月30日判決の事案を紹介しました。

これに関連して,今回は,事故による受傷は重症ではなかったものの,受傷をきっかけに入院し,そのまま寝たきりの状態となり,その結果的に死亡に至った事例として,神戸地裁平成14年2月14日判決(平成13年(ワ)第1050号 損害賠償請求事件)の事案をご紹介します。

本件は,左片麻痺を有する85歳の男性が,事故による肋骨骨折等が原因で寝たきり状態となり,147日後に肺炎で亡くなった事案です。

裁判所は,「亡Xは,本件事故による受傷自体によって,直ちに死亡したものとはいえないものの,本件事故による受傷と脳梗塞の後遺障害とがあいまって,ほとんど寝たきりの状態となり,それによって,体力・免疫力の低下を来し,健康状態が悪化し,肺炎を罹患して死亡するに至ったものと認められ,亡Xのような高齢者の場合,ほとんど寝たきりの状態になれば急激に体力の低下を来すことは通常あり得ることであるから,亡Xの死亡と本件事故との間には相当因果関係があるというべきである。」として本件事故と死亡の因果関係を認めました(事故の受傷と左片麻痺が相まって死亡するに至ったとして,3割の素因減額を適用)。

本件は,事故による受傷自体は,死に至る程度ではありませんでしたが,高齢者が寝たきり状態になったことを根拠に,因果関係を認めています。この事例や,前回にご紹介した事例(事故後いったん退院した後亡くなった事例)を見ると,高齢者であればあるほど,たとえ事故とは別の原因で死に至ったとしても,事故が寝たきり状態の契機となっていれば,因果関係が認められやすい傾向にあると言えるかもしれません。

このような判断は,非常に難しいものですので,まずは当弁護団までご相談ください。

弁護士 田 保 雄 三

 

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