最近、あおり運転等の危険運転が、テレビや新聞などで頻繁に取り上げられています。特に、東名高速道路で、ワゴン車を追い越し車線上に無理やり停車させて、そのワゴン車に大型トラックが追突し、被害者2名が亡くなった事故で、ワゴン車を無理やり停車させたとする加害者が、過失運転致死傷罪等の疑いで逮捕されたニュースは記憶に新しいと思います。
今回は、この問題に関連して、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の民事上の責任がどうなるのかということを説明したいと思います。なお、上記事故では、車を無理やり停止させた者の刑事上の責任が頻繁に取り上げられていますが、本コラムではこの点は割愛し、民事上の責任についてのみ説明します。
さて、この民事上の責任問題は、共同不法行為という問題に分類され、この共同不法行為が成立する場合には、先の事案でいうと、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の両名に対して、原則として同額の損害賠償の請求することができます。つまり、どちらかが無資力であっても資力のある加害者側に損害全額の請求ができるということになり、死亡事故のご遺族の救済に資することになります。
では、いかなる場合に共同不法行為が成立するといえるのでしょうか。共同不法行為が成立するためには、一般的に、関連共同性という要件が認められなければならないとされています。この関連的共同性は、必ずしも単一の事故でなくとも、第1事故と第2事故が時間的場所的に近接し、第1事故が第2事故の原因となっているといえる場合には認められる可能性があります。
そのため、冒頭のケースでも、民事上は、共同不法行為として、後続車を無理やり停車させた者と停止した車両に追突した車両の運転手の両名に対して損害賠償請求を行なえる可能性があります。
もっとも、複数台の車両が絡んだ事故に関する民事上の責任問題は、判断が難しいケースも多いため、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
弁護士 疋田 優