さて、飲酒運転による事故が起きた場合、被害者側・加害者側にとってどのような影響があるのかということについては、前回のコラムでご説明をしました。
そこで今回は、飲酒運転をしていた車両の同乗者にはどのような法的責任が成立しうるのかについてご説明します。
(1) 刑事上の責任
運転者が飲酒していることを知りながら、自らを乗せることを要求したり、依頼した場合には,下記のとおり刑事上の責任を負うことになります。
・運転者が酒酔い運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(道路交通法117条の2の2第4号)
・運転者が酒気帯び運転をした場合
2年以下の懲役又は30万円以下の罰金(道路交通法117条の3の2第3号)
(2)行政上の責任
また、同乗者が、飲酒運転であることを知りながら、自らを乗せることを要求したり、依頼した場合には、下記のとおり行政上の責任を負うことになります。
・酒酔い運転の場合
欠格期間3年の免許取消(違反点数35点)
・酒気帯び運転の場合
体内のアルコール量が呼気1Lにつき0.25mg以上の場合
→ 免許取消(欠格期間2年)
体内のアルコール量が呼気につき1Lにつき0.15mg以上0.25mg未満の場合
→ 90日間の免許停止
(3)民事上の責任
これだけにとどまらず、飲酒運転により交通事故が発生した場合、運転者だけでなく、同乗者に対しても、裁判例において、運転者が飲酒により正常な運転をできない状態に陥った経緯に同乗者が深く関与していたようなケースなどでは、同乗者の民事上の損害賠償責任が肯定されているものがあります。例えば、山形地裁米沢支部平成18年11月24日判決では、運転者と飲酒を共にし、運転者の車両に同乗した者らに対し、同乗者が、運転者と2時間近く飲酒を共にし、相当量の飲酒をしていることを認識しうる状況にありながら飲酒運転を制止するどころかこれに同乗したとして同乗者に対しても民事上の損害賠償責任を肯定しています。
このように、飲酒運転により事故が起きた場合、運転手だけではなく同乗者にも様々な法的責任が成立する可能性があります。特に飲酒運転に起因する事故では死亡事故をはじめとする重大な結果が生じるケースも少なくありません。同乗者にも民事上の責任追及等をされたいというご遺族の方は、まずは当弁護団の無料法律相談等を一度ご活用ください。
弁護士 疋田 優