自動車に乗って出かけて、お酒を飲んだ帰り道、「自動車運転代行」を利用する方も多いかと思います(間違っても飲酒運転は、絶対に避けてください)。今回の私のコラムでは、前回に引き続き、「運転代行を利用中、利用者自身がけがを負わされた場合に誰が事故の賠償責任を負うのか」について、解説します。
1 賠償責任の所在
結論から言うと、運転代行を利用中、利用者自身がけがを負わされた場合、利用者は運転代行業者に対して、損害賠償を請求できます。まず、利用者と運転代行業者との間には、利用者の自動車を運転して利用者と自動車を安全に運ぶサービスを提供し、利用者は提供されるサービスに対して料金を支払うという契約関係があります。利用者は、運転代行業者に対し、契約上の義務違反として損害賠償を請求できます。また、運転代行業者は、利用者との関係では、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任を負うと解釈されています(最高裁判所平成9年10月31日判決)。
2 賠償保険の利用
代行業者に十分な支払能力がない場合、利用者の損害を賠償してくれる保険の存在が重要となります。まず、運転代行業者は、法令に基づき、対人賠償8000万円、対物賠償200万円以上の自動車保険または共済に加入する義務があります。したがって、多くの場合、運転代行業者が加入する保険が利用者の損害を賠償してくれます。また、運転代行業者の中には保険に未加入の業者もあり、利用した業者が保険未加入だった場合には、利用者自身の自動車の自賠責保険が利用できます。したがって、運転代行業者が保険未加入の場合でも、自賠責保険の補償の範囲内であれば、賠償を受けることができます。
これまで2回のコラムでは、運転代行を利用した場合の損害賠償の問題を取り上げましたが、運転代行業者を利用中の交通事故については、賠償の責任の所在が複雑です。適正な賠償が受けられるか不安に思われる方は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士 藏 田 貴 之