交通事故により被害者が死亡した場合でも、被害者の遺族が、被害者の死亡を原因として何らかの給付を受けている場合、その給付等の額が賠償額から控除されることがあります。これは、いわゆる損益相殺と言われるもののほか、その他の根拠でも賠償額の算定において控除されるものがあります。
今回は、そのような項目のうち、裁判例上、一般に賠償額から控除されるものと控除されないものについて整理したいと思います。
1 賠償額から控除されるもの
①加害者側(保険会社を含む)からの弁済
②自賠法に基づく給付
・自賠責保険会社からの損害賠償額の支払い
・政府補償事業による損害の填補額の支払い
③各種社会保険給付
・労災保険法による遺族年金、遺族一時金、遺族年金前払一時金(詳細は柳田弁護士のコラム「死亡事故と労災保険⑵」をご
参照ください)
・国家公務員災害補償法による遺族補償金
・国民年金法による遺族基礎年金
・厚生年金保険法による遺族厚生年金
・国家(地方)公務員等共済組合法による遺族年金
・国家公務員等退職手当法による退職手当
・恩給法による扶助料
2 賠償額から控除されないもの
①見舞金等
②労災保険法による特別支給等
・遺族特別年金、遺族特別一時金、遺族特別支給金など
③定額保険等
・搭乗者傷害保険金、自損事故保険金、その他の各種定額の傷害保険金
・生命保険金
以上に挙げたものについては、それぞれに最高裁判決があり、賠償額から控除される根拠・控除されない根拠にはさまざまな理論的な問題があります。また、事案や金額によっては結論が異なることもあり得ます。
これらの詳細については、またコラムにてご紹介したいと思いますが、どのような給付が賠償額から控除されてしまうのかについては、難しい問題がありますので、まずは弁護士にご相談をいただくことをお勧めします。
弁護士 田 保 雄 三