葬儀費用はなぜ150万?

交通事故により被害者が死亡した場合、裁判実務では、葬儀関係費として原則150万円が損害賠償として認められています(当サイト内の「死亡事故の損害賠償の種類」参照)。

ただし、実際に支出した額が、150万円を下回る場合、実際に支出した額しか損害として認められません。

また逆に、実際に支出した額が150万円を上回っていても、150万円以上は損害として認められないのが一般的です。

葬儀費用は人によっても異なるのが通常ですし、150万円以上かかるケースも多いと考えられます。

なぜこのように「150万円」という基準で運用されているのでしょうか。

理由として挙げられるのは以下の点です。

① 個々の被害者について、社会通念から見て必要かつ相当とされる葬儀費用等を客観的な数値として認定することは容易でない。

② 葬儀の規模や方法は、実際には被害者及び遺族の社会的地位等によって異なるところ、そのような社会的地位等による格差を全面的に容認することになれば、同じ交通事故の被害者であるにもかかわらず、葬儀費用等として賠償が認められる金額に差異が生じることとなり、不公平を生じさせるおそれがある。

③ 葬儀費用等は、交通事故による死亡がなかったとしてもいずれ支出を避けがたい性格のものであり、現実の損失としては、支出時期が早まったことによる利息分の損害に限られると考えることができる。

④ 実際に葬儀等においては香典収入があるため、遺族が最終的に負担することとなる金額は現在の裁判実務で基準とされている金額に近くなると考えられる。

このようにしてみると、なぜ150万なのかについては、だれが見ても納得できる理由付けがされているとは必ずしも言えない気がします。

これらの根拠が妥当と言えるかどうかは、もちろん議論の余地がありますし、実際、裁判例においても、150万円に限られないと主張して葬儀費用代を争っていくケースもあります。

葬儀費用に限らず、一律の基準で運用されているものであっても、果たして妥当かどうか、という点は、一度弁護士にご相談されてみることをお勧めします。

弁護士 田 保 雄 三

 

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