さて、前回の民法改正に関するコラムでは「民法改正による交通事故の遅延損害金に関する影響」を取り上げましたが、今回は、「中間利息控除」をテーマに取り上げたいと思います。
そもそも、中間利息控除という言葉自体聞きなれない方も多いかもしれません。交通事故による損害賠償は、一時金(一括払い)で全期間分の補償が行われるのが原則です。 そのため、被害者の方にとって、一時金で支払われると、本来1年ごとに逸失利益の支払いを受ける以上に大きな利益を得ることになります。そこで、この逸失利益の計算においては、損害の公平な負担という観点から、将来の利息による増額分を控除する運用が行われており、その利息分の控除を「中間利息控除」と呼ばれています。
これまで、中間利息の控除方法を行う場合については現行民法では規定されていませんでしたが、改正民法によって明文化され、控除すべき中間利息の割合は、その損害賠償請求権が生じた時点における「法定利率」によることになりました(改正民法417条の2)。
そして、前回のコラムで説明したとおり、民法改正によって、これまで年5%であった法定利率が改正民法施行当初3%に変更されるので、この点で損害額が大きく異なってくる可能性がでてきます。
例えば、死亡事故で被害者の方がお亡くなりになった場合、事故当時38歳、基礎収入600万円、生活費控除率50%、労働能力喪失期間25年という架空のケースを想定すると以下のように逸失利益額に大きな違いが生じます。
(現行民法の法定利率年5%の場合)
600万円×0.5×14.0939=4228万1700円
(改正民法施行当初の法定利率年3%の場合)
600万円×0.5×17.4131=5223万9300円
このように、中間利息控除の部分でも、特に死亡事故をはじめとする重大な事故では民法改正による影響を大きく受けるものと考えられます。
弁護士 疋田 優