さて、前回の私が担当したコラムでは「民法改正による交通事故の消滅時効に関する影響」を取り上げましたが、今回は、「民法改正による交通事故の遅延損害金に関する影響」をテーマに取り上げたいと思います。
現行民法では、交通事故などの不法行為による損害賠償請求権の遅延損害金に関して、不法行為のとき(交通事故発生時)から年5%の割合による遅延損害金が発生するとされております。この遅延損害金の利率は、民法上の法定利率によるものとされています。そして、現行民法では、この法定利率は年5%の固定制が採用されているため、交通事故の遅延損害金の利率も年5%の固定となっていました。
しかし、改正民法では、法定利率について変動性が採用されることになったため、これに伴い、交通事故の遅延損害金の利率にも影響が生じます。具体的には、①まず改正民法施行当初(平成32年4月1日)からは、法定利率が年3%に変更となり(改正民法404条2項)、②その後3年毎に法定利率が見直され、法定利率に変動が生じる可能性があります(同条3項)。なお、この法定利率が見直される条件については、少し長くなるため、ほかの機会に述べます。
そのため、交通事故の遅延損害金の利率も、改正当初の利率が年5%から年3%に大きく変更されることになるのです。特に死亡事故をはじめとする重大な事故では、損害額が高額になるため、この改正による影響を大きく受けるものと考えられます。
弁護士 疋田 優