今回は、「母親、配偶者」となる方が死亡されたケースの「死亡慰謝料の増額」をテーマに取り上げます。
なお、被害者が「母親、配偶者」である場合の死亡慰謝料の標準額は一般に2500万円とされています(死亡慰謝料の増額事由については、「死亡慰謝料の増額(1)」、「死亡慰謝料の増額(2)」も併せてご覧下さい。)。
① 横浜地裁平成21年2月6日判決・自保ジ1831号75頁
36歳・主婦の女性とその子である小学生2名(女児・12歳、男児・8歳)が被害者となった死亡事故で、高速道路での渋滞停止中に、加害者の運転する大型貨物車が時速50㎞制限のところをほぼ無制動のまま時速82㎞で追突したこと、残された夫は一瞬にして最愛の妻と子供2人を失ったことなどを考慮し、主婦本人分として2800万円、小学生2人本人分各2500万円、主婦の父母の固有慰謝料各200万円の合計8200万円の慰謝料が認められました。
② 東京地裁平成18年10月26日判決・交民39巻5号1492頁
43歳・主婦兼アルバイトの女性が被害者となった死亡事故で、加害者が多量に飲酒し正常な運転が困難な状態であったこと、仮眠状態に陥って事故を起こしたこと、運転動機の身勝手さ、被害者が3人の子の成長を見届けることなく命を奪われた無念さ等を考慮し、本人分として2700万円、夫と子3人の固有慰謝料として、夫につき200万円、子3人につき各100万円の合計3200万円の慰謝料が認められました。
③ 大阪地裁平成28年1月14日判決・交民49巻1号1頁
57歳・主婦兼アルバイトの女性が被害者となった死亡事故で、加害者が、酒気帯びで夜間にもかかわらず無灯火で走行したこと、制限速度を40㎞以上超過する時速約81㎞で走行していたこと、たばこの火を消すために灰皿に目を落とした前方不注視等を考慮し、本人分として2200万円、夫の固有慰謝料として300万円、子3人について各200万円の合計3100万円の慰謝料が認められました。
次回は、「独身の男女」の方が死亡されたケースについて具体的な事例をご紹介いたします。
弁護士 柳田 清史