本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、本年最初のコラムは、前回に引き続き「死亡慰謝料の増額」をテーマに取り上げます。今回は、「一家の支柱」となる方が死亡されたケースについて、いくつかの事例を紹介したいと思います。
なお、被害者が「一家の支柱」である場合の死亡慰謝料の標準額は一般に2800万円とされています(前回のコラム「死亡慰謝料の増額(1)」も併せてご覧下さい。)。
① 東京地裁平成16年2月25日判決・自保ジ1556号13頁
54歳の男性が被害者となった死亡事故で、加害者が酒酔い運転で車両を対向車線に進入させたことにより事故が生じたこと、加害者が事故後に救助活動を一切しなかったこと、刑事事件の捜査段階において被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたなどの虚偽の供述を行ったことなどを考慮し、本人分として2600万円、妻と母についてそれぞれ500万円の合計3600万円の慰謝料が認められました。
② 大阪地裁平成25年3月25日判決・自保ジ1907号57頁
30歳・会社員の男性が被害者となった死亡事故で、加害者が無免許の飲酒運転であった上、事故現場から逃走し、被害者を約2.9㎞にわたり故意に引きずり死亡させたという殺人罪にも該当する極めて悪質かつ残酷なものであること、引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと、30歳にして妻と子を残して突然命を奪われた被害者の無念さ等を考慮し、本人分として3500万円、妻と子についてそれぞれ250万円ずつの合計4000万円の慰謝料が認められました。
③ 東京地裁平成25年12月17日判決・交民46巻6号1592頁
33歳・会社員の男性が被害者となった死亡事故で、加害者が、車上荒らしが発覚してパトカーの追跡から逃れようとして反対車線を時速約80㎞で走行したこと、事故後に被害者を救護しなかったこと、被害者が結婚式を挙げたばかりであったこと等を考慮し、本人分として3200万円、妻分として400万円、父母についてそれぞれ250万円の合計4100万円の慰謝料が認められました。
次回は、「母親・配偶者」の方が死亡されたケースについて具体的な事例をご紹介いたします。
弁護士 柳田 清史