死亡事故においては、事故態様の悪質性などから慰謝料の増額が認められる場合があります。今回は、死亡事故において慰謝料の増額が認められる場合について、取り上げたいと思います。
まず、死亡慰謝料については、亡くなられた方の立場に応じて、以下の基準に従って算定されるのが一般的です(「死亡事故の慰謝料相場と支払基準」もご参照下さい。)。これらの額には、原則的に近親者固有の慰謝料も含まれます(本サイトのコラム「死亡事故被害者の兄弟は固有の慰謝料を請求できる??」、「遺族固有の慰謝料請求権を高額化する事情について」等もご参照下さい。)。
一家の支柱 2800万円
母親・配偶者 2500万円
その他 2000万円~2500万円
もっとも、①酒酔い運転、無免許運転、ひき逃げ、大幅なスピード違反による事故など、事故態様が悪質な場合や、②謝罪がない、事故について虚偽の説明を行うなど、事故後の加害者側が著しく不誠実な対応を行っている場合には、上記の基準を超えて慰謝料の増額が認められることがあります。
例えば、東京地裁平成15年3月27日判決では、一家の支柱であった被害者の死亡事故において、加害者が飲酒酩酊状態で高速道を逆走するという常軌を逸した運転により事故を発生させたこと、加害者が事故後直ちに遺族らのもとへ謝罪に赴かないなど謝罪意思の表明の在り方において配慮に欠けた面があったこと等を理由に、3600万円の慰謝料が認められています。
また、近親者の固有慰謝料についても別途増額が認められた事例として、東京地裁平成24年3月27日判決では、両親を死亡事故で亡くした子ら4名が加害者に対し損害賠償を請求した事案で、加害者が長時間にわたる飲酒により高度酩酊状態となり、高速道でセンターラインオーバーにより対面被害車両に正面衝突した事故であること、加害車両の同乗者が運転者の刑事裁判では運転者の関与を認めたのに自身の刑事裁判では不合理な弁解に終始したこと等を理由に、両親の本人分慰謝料(一家の支柱)として各3200万円、子4人について各400万円の合計8000万円の慰謝料を認めています。
これらの事案は、上記の標準的な慰謝料基準と比較すれば、大幅な慰謝料の増額が認められた事例といえます。遺族の方にとって、悪質な交通事故によって大切なご家族を失われた悲しみが消えることはありませんが、加害者に対して民事上も悪質な死亡事故について然るべき責任を追及し、その精神的苦痛が慰謝料の増額という形で裁判所に認められることは、当弁護団としても非常に意味があることだと考えています。
悪質な死亡事故でご家族を失った方、加害者の不誠実な対応にお悩みの方は、是非一度当サイトへお問い合わせ下さい。
弁護士 柳田 清史