年金生活者の死亡逸失利益は請求できるか??

 近時、交通死亡事故においても、高齢者の方が被害者となる割合が増加しています。高齢者の方の場合、収入が年金のみである場合も少なくありませんが、今回は、このような場合に、その相続人が、将来受給できたであろう年金分を逸失利益として請求することができるかという問題を取り扱いたいと思います。

 結論からいえば、被害者が年金受給者であっても、国民年金や普通恩給については、逸失利益の請求は認められます。これは、受給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであること、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても同一の機能を営むものであること(最高裁平成5年3月24日判決参照)、保険料が拠出されたことに基づく給付であること(最高裁平成11年10月22日判決参照)等がその理由とされています。

 ただし、遺族年金については、専ら受給権社自身の生計維持を目的としていることや、受給権者自身が保険料を拠出していないこと等を理由に、逸失利益の請求が否定されています(最高裁平成12年11月14日判決参照)。

 次に、年金受給者が逸失利益を請求する場合の注意点として、生活費控除率の問題があります。年金受給者については、年金が生活費に費消される可能性が高いという性格上、稼働収入を得ている場合よりも高い割合で生活費が控除されるケースが多いという特徴があります(生活費控除率については「死亡事故の損害賠償の種類」もご参照下さい。)。事案によって控除率は様々ですが、生活費控除率が高いケースでは、70%から80%とされている例もあります(通常のケースでは30%~50%程度です。)。もっとも、稼働収入を得ている場合と同程度の控除率に留まるケースや、特別の事情によって生活費控除がされないケースなどもありますので、事案によって様々といえます。

 以上のとおり、年金受給者の逸失利益を請求する場合には、そもそも請求が可能かどうか、請求ができるとしてどの程度請求が可能かといった法的な問題を含む検討が必要となります。お悩みの際は、当弁護団の無料法律相談も、是非お気軽にご活用下さい。

弁護士 柳田 清史

 

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