前回の私のコラム「妊娠中に交通事故に遭ったら?」では、妊娠中の女性が交通事故に遭った場合に特有の問題のうち、①交通事故により流産してしまった場合について解説しました。今回の私のコラムでは、妊娠中の女性の交通事故に特有の問題のうち、② 交通事故が原因で切迫早産になってしまった場合について取り上げたいと思います。
まず、「切迫早産」とは、正期産と呼ばれる妊娠37週~42週未満より前に赤ちゃんが産まれそうになることを言います。一般的に、妊娠中期以降は子宮が大きくなるため、母体が交通事故の衝撃を受ける可能性が高くなります。そして、母体が衝撃を受けることで子宮内筋層への出血によって子宮が収縮し、結果として、切迫早産の可能性が高まると言われています。
交通事故が原因で切迫早産になった場合、入院した場合のみならず、通院治療の場合にも、慰謝料の増額の可能性があります。
というのも、入通院中の慰謝料は、通院期間と入院期間に応じて算定されるのが一般的ですが、切迫早産により入院や長期の通院の必要が生じた場合には、入院や通院の期間が長期になりますので、慰謝料の金額が大きくなります。また、そもそも「慰謝料」とは、被害者が被った精神的苦痛につき金銭賠償を求めるものですが、切迫早産を経験した妊婦は、通常の交通事故の被害者に比べて、より大きな精神的苦痛を被ることが多いと思われますので、精神的苦痛が大きい分、慰謝料の金額も大きくなります。
ただし、切迫早産の場合には、加害者(または保険会社)が「交通事故との因果関係」、すなわち「交通事故が原因で流産した」と言えるかについて争ってくることが想定されます。この場合には、被害者の側で因果関係を立証することが要求されますが、これは簡単なことではありません。また、被害者の妊婦が切迫早産になったことがまったく考慮されず、通常の交通事故の被害者の場合と同様の対応をされてしまう(例えば、切迫早産の治療費を負担しない、慰謝料が増額されない)可能性も十分考えられます。
もしもこのような状況に直面しましたら、必ず交通事故に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。当サイトにお問い合わせいただければ、その時々の状況に応じた、適切な助言をさせていただきます。
弁護士 藏田 貴之