女子年少者の逸失利益はどう決める??

 今回は年少のお子様、特に女性のお子様の死亡逸失利益の算定の仕方を取り上げたいと思います。

 一般に死亡逸失利益の算定は、

   基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

として算定されます(一般的な死亡逸失利益の算定の仕方については「死亡事故の損害賠償の種類」 もご参照下さい。)。

 ところが、年少者の場合には、未だ就労を開始していないことが多いから、基礎収入の算定をどのように行うかが問題となります。現在の裁判実務においては、女性(特に義務教育終了時まで)の年少者の場合、将来の就労可能性を考慮し、かつ社会情勢も踏まえ、男女間の格差をできるだけなくす観点から、死亡した年の全労働者の平均賃金を用いて、基礎収入が算定されるのが一般的となっています。

 もっとも、生活費控除率については、通常女性の場合は30%~40%とされるケースが多いところ、この場合には、同じく男女間の格差をなくすという観点から、独身男子に一般的に用いられる50%に近い45%として算定されることが一般的です。

 また、ライプニッツ係数については、死亡時から就労可能年数の終期である67歳までの年数に対応する係数から、死亡時から就労可能年数の始期である18歳までの年数に対応する係数を差し引いた係数を用いて算定されることとなります。

 これを前提に、例えば「平成27年に10歳の女子年少者が死亡したという死亡事故が発生した」として、死亡逸失利益を算定してみると、

 

    489万2300円  (平成27年・全労働者平均賃金)

     ×0.55   (1-0.45:生活費控除率45%)

     ×12.2973  (18.7605(57年)-6.4623(8年))

     =3308万9144円

となります。

 今回は、女子年少者の場合の死亡逸失利益について一般的な算定の例をお伝えしました(お子様の場合の死亡逸失利益算定の具体例については「交通事故で大切な方を亡くされた方へ(お子様)」 もご参照下さい。)。

 もっとも、上記の例は、あくまで一般的なケースを想定したものであり、実際の算定にあたっては個別の事情も考慮する必要があります。また、未成年のお子様であっても、義務教育終了後の女子の場合には、将来得られるであろう収入額についての見方も異なってくることから、上記の算定とは違ったルールに基づいて算定されている例も多数あります。どのような基準を用いて、基礎収入を算定するかは、賠償額にも大きく影響する可能性がありますので、当サイトの「無料法律相談」 等をご利用いただければ幸いです。

弁護士 柳田 清史

 

 

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