昨今、人口減少と労働力の減少が叫ばれる中、外国人労働者も増えています。
では、日本に滞在する外国人の方が日本において交通事故に遭い、亡くなったという場合、逸失利益はどのように算定されるのでしょうか。
まず、交通事故が我が国で発生した場合、被害者が外国人でも、原則として我が国の不法行為に関する法令が適用されます(法の適用に関する通則法17条等)。
そして、外国人の被害者であっても、逸失利益の発生及び計算式自体は、「死亡事故の損害賠償の種類」で説明した内容で変わりありません。違いが出てくるのは、計算式に当てはめる前提となる基礎収入の金額をどのように認定するか、という点です。
この点、一般的には以下の通りの基準となっているようです。
① 永住資格を有している場合
日本人と同様に基礎収入を算定する。
② 就労可能な在住資格を有し、現に日本で就労していた場合
日本での現実収入の金額を基礎とする。在留期間の更新を受けられる蓋然性が立証されれば、更新後の期間についても同様の金額を基礎とするが、立証がされなければ、在留期間後については想定される出国先での収入等の金額を基礎とする。
③ 就労可能な在留資格を有しておらず、かつ日本で不法就労していた場合
予測される日本での就労可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎とする。日本における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定する(最判平成9年1月28日民衆51巻1号78頁)。
④ 就労可能な在留資格を有しておらず、かつ日本で就労していなかった場合
母国での収入等の金額を採用する。
このように、外国人にどのような基準での逸失利益が算定されるのかは在留資格の有無やその他の事情により変わるといえます。
死亡事故に限らず、自社で雇用する外国人労働者が交通事故に遭ったという場合等は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士 田 保 雄 三