さて、今回は、会社役員の方が死亡事故の被害者となった場合の死亡逸失利益の算定について、被害者の方が会社役員である場合によく問題となる基礎収入の算定をテーマにしてご紹介したいと思います。
まず、死亡事故以外のケースにおいて、会社役員の逸失利益に関する基礎収入は、労務対価部分に限るものされていることに異論はありません。そして、会社役員の基礎収入には実質的な利益配当部分が含まれていることがままあることから、会社役員である被害者の方が受領していた役員報酬のうち労務対価部分の額に関して争いになるケースが多くあります。なお、その役員報酬中の労務対価部分は具体的にどのように判断されるのかという点は次回に述べたいと思います。
他方で、死亡事故のケースでは、役員の地位も失うため、死亡事故以外のケースと異なり、利益配当部分も含めて役員報酬全体を基礎として逸失利益を算定すべきではないかという議論があります。もっとも、裁判例では、死亡事故事案で基礎収入を労務対価部分に限定するケースや、役員報酬全額を基礎収入と判断している事案についても、その理由付けとして労務対価部分に言及しているケースも多いため、必ずしも死亡事故のケースで、利益配当部分を含めて役員報酬全体を基礎として逸失利益を算定しているとは言い難い状況であると思われます。
このように、会社役員の方が死亡事故の被害者となったケースでは、大変悩ましい問題が生じ得ますので、お悩みの方は無料法律相談等をご活用のうえで弁護士に一度相談されることをおすすめします。
弁護士 疋田 優