前回の私のコラム「ひき逃げ事故に遭ったら?」では、ひき逃げ事故に遭われた場合に、被害者の方々にとって有益な情報をご紹介しました。
前回のコラムでもご紹介しましたが、ひき逃げ事犯の検挙率は、被害が重大であるほど高くなり、ひき逃げの死亡事故の場合には犯人の検挙率は90%を超えていますが(平成26年度版犯罪白書)、検挙率は100%ではなく、加害者が見つからないケースもあります。交通事故の損害賠償請求は加害者(加害者の保険会社)に対してするのが原則ですので、加害者が見つからない場合には、被害者(とそのご遺族)は損害請求できないと思われるかもしれません。
そこで、今回のコラムでは、万が一、加害者が見つからない場合にご遺族の方が利用することができる制度をご紹介します。
① 自動車保険の人身傷害保険特約
被害者ご自身かそのご家族が契約している自動車保険に「人身傷害補償保険」や「無保険車傷害保険」の特約が付帯されている場合は、そこから補償を受けられる可能性があります。
まずは、保険の種類を確認して、加入している自動車保険の保険会社に問い合わせてみましょう。
② 政府保障事業制度
被害者やそのご家族の自動車保険が利用できない場合には、政府保障事業制度を利用することが考えられます。
政府保障事業制度とは、本来ひき逃げを起こした加害者が被害者に支払うべき損害賠償金を、国(国土交通省)が補てんする制度をいいます。死亡事故の場合、最大3,000万円まで補償されます(過失割合等により減額されることがあります)。政府保障事業制度の請求は、自賠責保険を取り扱う損害保険会社や、責任共済の窓口を通じてすることができます(大まかな流れは次のようなものです)。
まずは、ご自身が契約の自動車保険に問い合わせてみましょう。
当サイトにお問い合わせいただいても、適切な助言をさせていただきます。
<政府保障事業制度のご利用の流れ>
窓口へ相談
→ 請求書類の取り寄せ(原則として自賠責保険の請求と共通です)
→ 書類を損害保険会社へ提出・受理
→ 損害保険料率算出機構が損害の調査
→ 国土交通省で審査・決定
→ 損害保険会社が被害者(ご遺族)にお支払い
③ 労災給付
通勤中や仕事中の交通事故であれば、労働災害として被害者の勤務先が加入している労災保険に請求することができる可能性があります。詳しくは、当サイトのコラム「死亡事故と労災保険(1)」をご参照ください。
ひき逃げ事故で大切なご家族を亡くされたご遺族の皆さま、
万が一、加害者が見つからなくともあきらめることはありません。
当サイトにお問い合わせいただければ、その時々の状況に応じた、適切な助言をさせていただきます。
弁護士 藏田貴之