「被害者が主夫である場合の死亡逸失利益」について

 今回は、「被害者が主夫である場合の死亡逸失利益」をテーマに取り上げたいと思います。

 家事従事者が死亡事故の被害に遭った場合には、死亡逸失利益(被害者が死亡しなければその後就労可能な期間において得られたであろう利益)を請求できます。交通事故の損害賠償において、家事従事者とされるのは主婦(女性)の方が多いですが、主夫(男性)の場合もあります。

 例えば、裁判例の中には、被害者が男性(事故当時76歳)であり,事故の5年ほど前から,妻との二人暮らしの中で,家事労働を担当していた事案において、「平成25年賃金センサス年収額表に基づく女子学歴計70歳以上の年収額283万5200円を基礎収入とし,生活費控除率50%,稼働可能期間を76歳に対応する平均余命の約2分の1となる5年(括弧書省略)として以下の算式により算定される金額を,被害者の家事労働分の逸失利益として認めるのが相当である。」として、主夫の死亡による逸失利益を認めています(東京地裁平成28年10月26日判決)。

 このように、個々の事案によっては、被害者となった男性が主夫として家事従事者であると評価されるケースもあります。もっとも、その立証が可能か否かという点は、事前の検討を十分に要するところであると思われます。

 

弁護士 疋田 優

 

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