「法定相続情報証明制度」、最近ニュース等で耳にされた方も多いのではないでしょうか。死亡事故が起きた場合に必ず発生するのは、お亡くなりになった被害者の方(相続の関係では「被相続人」といいます。)の相続の問題です。事故に関する損害賠償請求権も相続の対象となることから、遺族の方においても、誰が相続人になり加害者へ賠償請求することができるのかを把握しておく必要があります(「死亡事故と相続人について 」もご参照下さい。)。そこで、今回はこの点を取り上げてお話したいと思います。
相続が発生した場合、遺産分割や遺産の承継手続を行うためには、相続人が誰であるかを証明して、相続人を確定することが必要となります。それを行うためには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を取得して法定相続人の範囲を調査する必要があるのですが、いざ戸籍の収集を始めて見ると取得する戸籍の数が膨大になることがしばしばあります。従前、実務上、相続登記や被相続人名義の預貯金の払戻し等を行う際には、相続人関係を証明するためにこれらの全ての戸籍の原本を提出して手続が行われてきましたが、手続の度に大量の戸籍のやり取りが必要になったり、手続を行う側もそれらを全て確認して相続人の確定に問題がないかを確認しなければならないなど、双方にとって負担の大きいものとなっていました。このような状況に鑑み、登記所(法務局)へ全ての戸籍と法定相続人の一覧図を提出して申請することで、登記所において、提出した法定相続情報の一覧図に認証文を付した証明書(偽造防止措置を施した専用紙による写し)を無料で発行してもらえるという制度、すなわち冒頭の「法定相続情報証明制度」が創設されました。
同制度は本年5月29日より運用が開始され、まだ制度としては始まったばかりですが、相続手続等における負担を軽減することで、未対応のまま放置されることも多い相続登記を促すなど、今後の活用が期待されています。
もっとも、制度利用の前提となる相続人調査自体は、従前どおり相続人側において行わなければならないため、相続関係が複雑であったり、戸籍の取得手続の仕方が分からないという場合には、弁護士等の専門家へご相談されるのがよいでしょう。当サイトにおいては、死亡事故被害による損害賠償請求のご依頼をいただいた場合は、その前提として必要な手続である相続人調査も着手金無料の範囲で行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
弁護士 柳田 清史