さて、前回は、会社役員の方が死亡事故の被害者になった場合の死亡逸失利益について取り上げましたが、今回は、個人事業主の方が死亡事故の被害者となった場合の死亡逸失利益の基礎収入の算定をテーマにしてご紹介したいと思います。
まず、死亡事故以外の場合又は死亡事故のケースでも事故で傷害を負った後に一定の期間経過後にお亡くなりになったケースでは、症状固定時までは休業損害として請求することになります。この場合の基礎収入は、申告所得額の金額に固定経費(例えば、公租公課、損害保険料、減価償却費等の事業継続のためにやむを得ない出捐をいいます。)を加算して請求することができます。
他方、後遺障害逸失利益や死亡逸失利益の基礎収入の算定においては、通常、固定費を加算する取り扱いはできないと考えられています。これは、休業損害の基礎収入額の算定において申告所得額に固定費を加算できるのは、固定費が休業期間中も将来の事業継続のために従前どおり支払を継続しなければならず、いわば休業期間中に無駄な支出を余儀なくされたと評価できる経費であると考えられているからです。そのため、このような評価ができない後遺障害逸失利益や死亡逸失利益の基礎収入の算定においては、固定費を基礎収入に算定できないと考えられています。
弁護士 疋田 優