少し前の話になりますが、スマートフォン用ゲームアプリのポケモンGOを使用しながら運転していた加害者の自動車にはねられ、被害者が死亡するという交通事故のニュースをよく耳にしました。
民事裁判実務において、死亡慰謝料には、一定の基準が設けられていることは当サイトの「死亡事故の慰謝料相場と支払基準」でもお伝えしているとおりですが、加害者に故意もしくは重過失(例えば、無免許、ひき逃げ、酒酔い等)または著しく不誠実な態度がある場合には、基準額よりも増額されることがあります。
そこで、今回、冒頭の例において、慰謝料増額事由が認められるのかを検討してみたいと思います。
まず、私が調べた限り、民事の裁判例はまだありませんでした。しかし、刑事の裁判例では、「自動車の運転には全く必要のないゲームをするために,前方注視という自動車運転者として最も基本的な注意義務を怠り,本件事故に至っているのであるから,その過失の態様は非常に悪質といえる」ことなどを理由に、禁固3年の実刑判決という交通事犯の中では重たい判決が下されています(名古屋地方裁判所一宮支部平成29年3月8日判決)。
この刑事事件の裁判例を参考にすると、冒頭の例において、民事裁判でも加害者には慰謝料増額事由を認めるに足りる重過失が認められるのではないかと考えられます。
当サイトをご覧になっている方でも、慰謝料の増額事由についてお悩みの方は、当サイトの無料法律相談、概算賠償額診断サービスなどをお気軽にご活用ください。
弁護士 疋田 優